1級

スカルラッティ:ピアノソナタ K.87 L.33 ロ短調

解説

バッハやヘンデルと同年に生まれたイタリアの作曲家、ドメニコ・スカルラッティは、555曲にものぼるチェンバロのためのソナタで知られています。しかし、それらが正確な形で出版された例は少なく、自筆譜もほとんどが散逸してしまいました。彼の作品はもっぱら第三者の手による写本という形で残されているのです。その中でもこのK.87/L.33は写本ごとの差異が大きい上に、他の作品のいずれとも似ておらず、謎の多い、異質なものであると言われています。また、スカルラッティの作品には、エネルギッシュなものが多く見られますが、この楽曲は粛々として憂いを含んでいるとさえ言える点も、この楽曲の特異さを示しています。

執筆者:山本大地

参考演奏

冒頭譜例